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【クゼがネットへ旅立った年、コシキは自宅で死亡】攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXシリーズ 解説と考察

2017/06/27

ハリウッドの実写版攻殻機動隊「ゴースト・イン・ザ・シェル」の上映に先立ち、関連作品の観なおしをしてみた。

その中でも重要&内容の理解が難しい「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXシリーズ」を再考察・解説した。

 

【STAND ALONE COMPLEXシリーズ】

  • 「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」(全26話)
  • 「攻殻機動隊 S.A.C 2nd GIG」(全26話)
  • 「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」(全1話)

 

1995年の劇場版「攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL」とは違った視点から、「進化」と「多様性」をいう同じテーマに焦点を当てたこのシリーズを解釈する際に参照いただけると幸いである。

 

なお、本記事の最後には、STAND ALONE COMPLEXシリーズ3作品の全話(53話)を、無料で視聴する方法も紹介している。

もう一度見たいシーンがある、全話見直しをしたい、という時にぜひ活用して欲しい。

(※詳細はこちらを参照)

 

また、実写版「ゴースト・イン・ザ・シェル」の関連作品は以下の記事にまとめた。

本記事同様、実写版を見る前にぜひ一読して欲しい。

 

「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」

「笑い男」と「STAND ALONE COMPLEX」という現象を理解することがすべての鍵。

この2つの観点から、本作品の解説をしてみようと思う。

 

笑い男の正体

笑い男の(一応の)正体は「アオイ」という青年。

(青年というより少年に近いかも)

不正により大規模企業となった製薬会社の社長に、不正の真実を公表するようにせまる。

ただその方法は、良く言えば「実直」、悪く言えば「青臭い」。

(「アオイ」という名前もおそらく、若い・青臭いという意味の「青い」からとっている)

生中継のテレビの前に社長を連れ出し、拳銃を突きつけ「全国に真実を告白しろ」と脅迫する。

しかし老練の社長に「やめろ、君には撃てんよ(青臭いから人は殺せない)」ということが見抜かれ逃走。

 

そんな青臭い言動とは反対に、凄まじいまでのハッキング能力を有している。

脅迫時に自分の素顔がばれないように、現場にいた人間の電脳・テレビを見ていた人間の電脳・録画をしていた機材等、すべてにハッキング&潜入し、自分の顔の映像の上に「笑い男マーク」(にこちゃんマークみたいなもの)を上書きしている。

一人の人間の電脳に潜入して視覚情報を書き換えるだけでも、相当のハッキング技術が必要。

そのことからも拳銃で脅迫をしながら、同時にリアルタイムで数十万~数百万の電脳に潜入し視覚情報の上書きをすることが、常識では考えられない規格外の能力であることが分かる。

これだけの能力を持っていれば、社長をゴーストハック(電脳に新入して意のままに操ること)して不正を白状させることもできるのに、「あくまで社長の意思で真実を公表しなければ意味がない」と考えるあたりが実に青臭い。

 

結果的にこの脅迫は失敗に終わるが、そのハッキング能力の凄まじさと青臭さのギャップがあまりにも大きかったがゆえに、センセーショナルな事件として、その後多くの共感者を生み出し、「笑い男」が流行・さまざまな社会現象まで引き起こす。

 

一方、不正を行った製薬会社への脅迫事件はその後もさまざまな形で行われる。

が、これは「アオイ(≒ 笑い男)」が行ったものではなく、また「アオイ」が指示・指導したものでもない。

まったくの他人が「それぞれ独自に」同様の事件を起こす、という不可解な現象であった。

 

この現象こそが「笑い男」の真の正体であり、この作品のメインテーマ。

 

「STAND ALONE COMPLEX(スタンド・アローン・コンプレックス)」

 

STAND ALONE COMPLEXとは

電脳化とそれぞれの電脳をつなげるネットワーク化の高度発展により、人々はあらゆる情報(含む、意識・記憶)を瞬時に共有(入手&提供)できるようになる。

この情報の共有を「情報の並列化(複数が同じ情報を持つ)」という。

情報の並列化は本人の意思とは無関係に、情報に触れるたびに行われる。

結果として人々は無意識下に、今まで触れた情報の影響を蓄積していく。

触れる回数の多い情報や、画期的な情報(例えばセンセーショナルな事件の意識)ほど、無意識下に対する影響が大きく、またより多くの人々の無意識下に影響を与える。

例えばセンセーショナルな事件を起こした「アオイ」の意識(≒情報・思想・記憶)。

こういった意識の並列化は、オリジナルである「アオイ」自身とネットワークで繋がるだけでなく、人々の無意識下に蓄積された意識同士が繋がることにより促進され、結果的に大衆が無意識下に同じ意識を持つこととなる。

この無意識下で発生する集団の総意により引き起こされる、一見集団性をおびた個人個人の行動が、「STAND ALONE COMPLEX(スタンド・アローン・コンプレックス)」である。

その総意はオリジナル(例えば「アオイ」)の意識をもとに形成されるが、正確にはオリジナルの意識とそれに触れた個人の意識の融合意識、そしてそれぞれの融合意識同士が並列化することにより融合された集合意識であるため、オリジナルに似て非なるもの、オリジナルの意識を介さない独立した意識である。

 

一連の「笑い男事件」はこのような意識(というか無意識)によって引き起こされた行動(脅迫事件)であるため、オリジナルである「アオイ」の知らないところで、オリジナルの思想を受け継いだかのような一貫性を有する。

またあくまで「無意識下」で発生した集団総意に基づくため、特定のグループやリーダーの存在がない「個人」による犯行という形をとる。

この集団総意こそが本当の「笑い男」の正体。

(事実、アオイは「自分自身が笑い男である」とは一度も言っていない)

そして「笑い男」の正体以上に重要なことは、この集団総意が

 

オリジナルのコピーではなく、オリジナルと不特定多数の融合意識の集合体が作り出した、新たなオリジナルの集合総意。

 

であるということ。

このことはこれ以降の続編「攻殻機動隊 S.A.C 2nd GIG」「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」、そして3部作全体を通して監督・製作者が訴えている「進化」という重要テーマを理解するためのキーワード(にしては少し長いが)であるため、しっかり頭に残して欲しい。

 

なお、一連の「笑い男事件」はアオイの意思を素子が引継ぎ、「笑い男」として瀬良野を説得することで、一応の幕引きとなる。

素子はアオイの意思と記憶を引き継ぐ際、並列化によりアオイの「正義感」を無意識下に蓄積することとなる。

 

「攻殻機動隊 S.A.C 2nd GIG」

「合田」と「クゼ」

この2人がこの作品の中心であり、次の「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」の伏線を多分に内包している。

ここではこの2人の解釈から、本作の解説をしていく。

 

合田一人(ごうだかずんど)について

合田は、今の社会(日本)はもうダメだと考えている。

放射能除去技術の開発により経済大国にのし上がったあと、人々は自ら考えることをやめ、消費による快楽に流されてしまう。

そしてそれは、楽なものへ流される人間の本質と、それを欲する人間同士が容易に並列化できてしまう電脳・ネットワークによる社会構造によるものである、と。

私は、随分以前から今の社会システムには、致命的な構造的欠陥がある事を発見していた。

(中略)

本来変質しない筈の情報の変質と、個性と言う名の幻想的オリジナリティが、今の社会システム内において、いとも簡単に並列化を起こしてしまうと言う事だ。それを私は、消費と言う名のクリエイト行為と名付けている。

(攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG 第9話 合田のセリフより引用、一部省略)

 

この現状が変えようのないものである以上、これを有効に利用することこそが最良の方法、というのが合田の考えである。

有効に利用する方法とは、軍事による大国への返り咲きをもくろむ米帝の傘下に入り(=主導権を渡す、自ら考えることをやめる)、代理戦争や放射能除去技術による特需を得ることにより、考えることなく消費という快楽を享受し続けるという構造(今の社会)を維持すること。

かつての米ソ冷戦構造下時、朝鮮戦争特需にわいたころの日本の再現である。

今、この国が求めている物は、第三者を消費する事でのみ成立する桃源郷の再現だ。かつて、この国は偶然にもそれを体現した歴史がある。動機なき者達は今もそれを無自覚に欲している。私は彼等にそれを与えてやるだけだ。

(攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG 第9話 合田のセリフより引用)

 

そして自身は考える側である米帝に亡命し、正当な評価を得る。

 

なお、合田の狙いを理解するには、攻殻機動隊内での歴史・国際背景を知る必要がある。

第3次世界大戦:アメリカ勝利するも核の冬で疲幣

第4次非核大戦:代理戦争各地で勃発。日本の奇跡で経済大国に返り咲き&アメリカ:核の冬&軍備維持で経済は破綻

米帝が日本を傘下に入れれば、軍事による大国への返り咲きが可能。

核と放射能除去技術(独占)の両方をもてば、そもそも最強。

放射能汚染を気にせず、最強の武器である核兵器を使用できるから。

代理戦争で核と放射能除去技術を提供すれば、自ら血を流すことなく各国を制圧することすら可能。

この時、日本は放射能除去技術を提供することで濡れ手に粟。

怠惰な消費を維持できる。

(※米帝:べいてい。大戦によりアメリカが3つの国に分かれた。その3つのうち最も軍事に寄った国)

(※第3次世界大戦:EC・アメリカ連合とソ連の間で勃発した世界大戦。大量の核兵器が使用され、EC・アメリカが勝利。世界は核の冬)

(※第4次非核大戦:東京への核攻撃を契機に勃発した、EC・アメリカ連合とアジア連合を中心とした世界大戦。各地で代理戦争が起こる。この大戦中に日本は放射能除去技術を開発し、経済大国へと復興を遂げる。大戦はアジア連合の勝利)

 

そしてこれらのことを実現させるために合田が取った手段が、人為的にSTAND ALONE COMPLEXを作り出し、コントロールすること。

具体的にはウィルスにより、共通の思想を持つつながりを持たない集団(個別の11人)を作り出し、彼らの行動により大衆の無意識を意識的にコントロールする。

個別の11人の思想は「難民(招慰難民)を攻撃することで難民の蜂起を促す」こと。

この思想による合田の本当の狙いは、日本が米帝の傘下に入るための世論操作。

難民と国民の対立をあおり、それにより米帝に有利な日米安保改定の締結・米帝に有利な難民問題の軍事介入の下地作り。

当初の計画通り個別の11人の自決が行われることのより世論操作は一定の成果をあげるも、米帝の核による軍事介入(タチコマの犠牲により阻止)・米帝寄りの日米安保改定締結(茅葺総理により阻止)・合田の米帝亡命(亡命前に少佐に射殺され未遂)はいずれも完遂されず終わる。

 

一連の合田の行動を見ると「敵対する悪者」のイメージが強い。

確かに陰湿な自己欲求を満たす側面は多々あるが、すべては合田なりに日本の現状を憂いた上での、合田なりの「正義」の結果である。

憂うべき現状を作ったのは大衆であり、合田はその大衆をSTAND ALONE COMPLEXを用い「自分の理想」に染めることにより、現状を解決しようと試みた。

ただこの合田のやり方では「笑い男事件」ほどの効果は望めない。

なぜなら合田は「オリジナル(自分の理想)のコピー」を大衆の無意識下に埋め込んだに過ぎないからだ。

どれほど優れた理想であっても、コピーは一時的な効果しか生まない。

これが上手くいかないことは、1995年の「攻殻機動隊 / GHOST IN THE SHELL」で明確に述べられている。

「戦闘単位としてどんなに優秀でも、同じ規格品で構成されたシステムは、どこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も、特殊化の果てにあるのは緩やかな死」

(劇場版「攻殻機動隊 / GHOST IN THE SHELL」草薙素子のセリフより引用)

 

逆を言えば、コントロールや伝播を目的としない並列化において、この「理想」「正義」は他人の無意識下に蓄積される。

合田の電脳に直接アクセスし、そのもっとも深い部分(Ghostライン)の思想を並列化したのは、ポセイドンイダストリアルのデカルトケイン(合田の擬似人格が保管されている巨大コンピュータ)に侵入した素子であろう。

結果として皮肉にも、合田に敵対する素子が、その無意識下に、合田の身勝手ともいえる「正義感」を蓄積することになる。

 

クゼ(九世英雄)について

合田とはあらゆる面で相反するように見えるクゼであるが、実は合田と同じ考えの持ち主。

合田が社会を憂い、人々を変えようとしたように、クゼもまた社会を憂い、人々を変えようとしている。

クゼ・合田とも、「並列化により都合のよい情報に流され、無自覚に消費するだけの存在になってしまった人々」を憂いており、それを変えようとしていることは、下記のセリフを見れば明白だ。

 

【クゼの憂い】

だが俺を最もがっかりさせたのは人々の無責任さだった。自分では何も生み出す事無く何も理解していないのに、自分にとって都合の良い情報を見つけると逸早くそれを取り込み踊らされてしまう集団。ネットと言うインフラを食いつぶす動機無き行為が、どんな無責任な結果をもたらそうとも何の責任も感じない者達。俺の革命とはそういった人間への復讐でもある。

(攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG 第25話 合田のセリフより引用)

 

【合田の憂い】

今、この国が求めている物は、第三者を消費する事でのみ成立する桃源郷の再現だ。かつて、この国は偶然にもそれを体現した歴史がある。動機なき者達は今もそれを無自覚に欲している。動機なき者達は今もそれを無自覚に欲している。私は彼等にそれを与えてやるだけだ。

(攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG 第9話 合田のセリフより引用)

 

両者の違いは、これを解決のための手法と、目指すゴールの方向だけである。

合田の手法とは「難民と国民との対立」、ゴールが「米帝傘下での消費」

対するクゼが取った手法は「難民を導く」ことであり、そのゴールは「上部構造へのシフト(ネットと融合することによる進化)」である。

 

クゼは第4次非核大戦中、PKF(≒PKO)として朝鮮半島に渡るも、その後失踪。

その間、ユーラシア大陸を放浪し、多くのアジア難民(のちに日本に招慰され、招慰難民となる)に生きる希望を与えられる。

しかし同時に、そんなアジア難民でさえ、簡単に都合のよい情報に流されるのを見て、人間の本質は「無自覚・無責任に欲求を満たすだけの存在」(人間は元々低きに流れる様に出来ている物らしい)であり、そして現在のネットワークが欲求を満たす情報を与え続ける構造である限り、この本質から脱却できないことを悟る。

 

人間が肉体を持つ限り、物質的な欲求(消費)から逃れられないのであれるなら、肉体を捨てれば物質の欲求に縛られることのない、真に自立・独立した存在になれる。そして情報伝達の媒体という本来の役割を終え、肉体を捨てた人間のGhostが存在する場所になること、それがネットワークの新たな存在目的となる。

 

1995年の劇場版「攻殻機動隊 / GHOST IN THE SHELL」の人形使い(素子と融合する前)に極めて近い存在。

これがクゼの言う「上部構造へのシフト」であり、「革命」である。

今この地上を覆い尽くさんとしているネットワークは、既に下部構造と化し本来の目的を終え別儀を創造している。そこからは不可分ながら土台たる下部構造に対し確実に新義ある反作用を及ぼす存在となり上部構造へとシフトする。それが俺の考える革命の定義です。

(攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG 第23話 クゼのセリフより引用)

 

このような考えを持っていたため、クゼは合田がばらまいた「個別の11人ウィルス」に感染・発症しながらも、それが「難民(招慰難民)を攻撃することで難民の蜂起を促す」という思想操作を起こすウィルス(自分が考える難民の解放とは違う)であることに気付き、ウィルスを分離することに成功する。

その後クゼは自らの理想を実現すべく行動を起こす。

 

クゼの理想とは、難民たちが真の自立・独立した存在になるため、彼らに肉体を捨てさせ、彼らのGhostをネットと融合させること(上部構造へのシフト)。

そしてその前段階として、難民たちに自立・独立の意識を根付かせ、それを実行に移す意志を持たせようとする。

そのための目標としてかかげたのが「長崎出島に難民の独立国を創る」という、いわば第一段階としての革命である。

クゼは自身の意識を以下のように構成する。

 

自分(クゼ)は難民を助けるためだけに行動する(表層意識) → そのために難民の独立国を創る(表層意識) → そのためには自立・独立の意識を持ち、自ら実行する意思を持つ必要がある(深層意識) → 真に自立・独立するには、肉体を捨て、Ghostをネットと融合し、進化する必要がある(深層意識 = クゼの理想 = 革命の最終ゴール)

思想ウイルスを乖離し、出島に戻った俺に、難民の多くがすぐに結線し始めました。俺はその時から、彼等の意思を重視し彼等の望みを叶える為に助力する事だけを唯一の行動原理と決めた。それで彼等のリーダーになる事は然程難しく無かった。それ以外の意識にはフィルタリングをかけ、絶えず結線してくる難民の意識を俺の抱く理想と並列化出来る様に努める。俺は大戦直後、ユーラシアを彷徨しシステムの中の個人の存在意義を捜し求めた事がありました。その途上、人は本来他者の介在があって始めて存在し得る物だと言う事を難民に教えられた。

(中略)

いいえ。俺の考える革命はもう少し先にある。今はその革命のゴールである上部構造に人々を向かわせる為の前段階だと考えています。

(攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG 第23話 クゼのセリフより引用)

 

このように構成した意識に同調する強力なSTAND ALONE COMPLEXを引き起こすため、難民がクゼの電脳に自由にアクセス&クゼの意識と並列化できるよう、自らの電脳を開放する。

 

電脳の開放とは、電脳を不正侵入から守る攻性防壁を取り除き、さらにアクセスしてくる全ての人の意識(正確にはアクセスしてくる全ての「難民」の意識:約300万人)に同時対応するということ。

常人であればこのような電脳の開放は不可能。

攻性防壁を取り除いた時点で、電脳ハック(電脳を操られる)やウィルスによる電脳汚染を受け、また300万人もの意識に同時アクセスを受けた時点で、処理能力がマヒして電脳がパンクする。

 

しかしクゼは強靭な精神力のみで、電脳の開放を実現する。

素子いわく「クゼは既に聖域に入っている(アドレナリンの分泌量は常人の致死量に達していた)」

洋輔いわく「300万人からの問いかけに答え続ける精神力を持っていてこそ出来る神業」

 

本来ネットワークには「中心」というものは存在しない。

情報伝達のための経路網、つまり分岐した道の集まりに過ぎないため、そこを通過する情報(含む自由意志)を「遮断」することはできても、意図的に「集める」ことは難しく、無限に近い分岐を持つネットワークにおいて、経路操作による情報統制は実質不可能。

しかしクゼは神のごとき精神力と強烈なカリスマ性により、自分の電脳に人々を引き寄せるネットワークの中心的存在「ハブ電脳」となる。

 

こうして自らが大規模な並列化システムとなることで、まずは表層意識の並列化によるSTAND ALONE COMPLEXである「長崎出島に難民の独立国を創る」という革命活動を起こす。

さらにこの革命活動により、「自立・独立の意識とそれを実行する意志」という深層意識の並列化を促進させ、「肉体を捨て、Ghostをネットと融合・進化することが、真の自立・独立」という最深層意識の並列化と実現へと難民を導く。

 

合田の画策により暗殺され、実現することのなかったクゼの最終目的である難民の「進化」

全人類にとっての悲願ともいえるこの理想を実現すべく、己の全てを注ぎ、限界をはるかに超えた力で難民を導いたクゼの行動は、一見、合田とは対極の最善の方法に思える。

しかしクゼがとった方法には、実は合田と同じ欠陥があり、そしてその欠陥は「進化」を実現する上で致命的なものであった。

 

ハブ電脳により、クゼの理想を難民たちに並列化させるという方法は、結果的に「クゼ個人の理想のコピー」を難民たちの無意識下に埋め込むということ。

いかに優れた理想であっても、その理想で大衆を染め上げること(=同一規格化)は「多様性の放棄」、すなわち「進化の放棄」であることは、合田の失敗からも明らかである。

合田は思想操作ウィルス(個別の11人ウィルス)を使ったが、クゼはさらに強力なハブ電脳を使うことで、いわば強引に難民を同一規格化させてしまった。

さらに米帝の核攻撃がせまった際、難民を救うため、強制的に彼らのGhostをネットへ運び去ろうとまでした。

このような「進化」のための「理想の同一規格化」「強制的な理想の実現化」が、実は「多様性の放棄」そして「進化の放棄」という結果を生む行為だったのである。

 

米帝が発射した核ミサイルにタチコマたちが自ら衝突することで、これらの行為は未完に終わる。

もともと同一規格化を目的に作られたAIに過ぎないタチコマが、常に「多様性」を取り込み並列化を繰り返すという、クゼとはまったく逆のアプローチでGhostを宿す存在に「進化」し、クゼと難民を救ったのは実に皮肉なことである。

 

結局クゼの革命とは、難民の多様性を潰し、自己の理想を押し付ける身勝手なものであった。

ただ、合田と同じく、すべてはクゼなりに現状を憂いた上での、クゼなりの「正義」の結果である。

 

空爆による瓦礫の下で素子と有線した時に、このクゼの「正義感」も並列化され、素子の無意識下に蓄積させるのだが、この時クゼは非常に重要なことをする。

それまで素子が無意識下に蓄積させてきた、バトー・トグサ・アオイ・合田・荒巻・クゼ、の「身勝手な正義感」

クゼは素子との並列化により、これらの正義感を内包した無意識を自身の中に取り込んだあと、自分のGhostをネットへ転送する。

 

クゼが自身のハブ電脳と素子の無意識をネットへ運び去ったこの年(Solid State Societyの2年前)、コシキは人知れず自宅で死亡する。

 

クゼがリンゴをかじったこと(肉体の感覚を感じる最後の行為)を知ることで、素子はクゼが肉体を捨てネットへ旅立ったことに気がつくが、自分の無意識下に蓄積された意志や情報までがネットに上がったことには気付かない(無意識下だから)。

そして組織の限界を感じた素子は、公安9課を去る。

 

「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」

シリーズ最終作にして、すべての伏線がつながる集大成。

「多様性を取り入れた並列化こそが進化につながる」

ということをSTAND ALONE COMPLEXという現象を通して伝えている。

 

傀儡廻の正体

傀儡廻の正体は、一言でいうと草薙素子の無意識。

ただ、その形成過程において、いくつかの層をなしている。

 

まずもっとも中心となるのは素子の意思。

そして素子の意思を取り囲む形で融合しているのが、バトー・トグサ・アオイ・合田・荒巻・クゼ。

傀儡廻が言うところの「身勝手な正義感を持ち合わせている人間」

素子はこの6人全員のGhostに直接アクセス・並列化をしており、その並列化の際、彼らの意思を無意識下に宿す。

その現象は「一対一」のSTAND ALONE COMPLEXともいえる。

(※正確には、合田とは直接アクセスをしておらず、合田の擬似人格にアクセス・並列化している)

 

この6人の意思と素子自身の意思が、素子の無意識下で融合し、傀儡廻のという人格の中心となる。

これらの意思はすべて、自立・独立した考えを持ち、その考えに基づき行動する実行力を持った者たちの意思。

 

いいかえれば、ネットという常に並列化が起こる環境において「個」を保ち続けることができる資質である。

 

さらにこの中心である融合意思は、素子の無意識下にある無数の意思と並列化を繰り返すことにより、膨大な多様性を取り込む。

これによりオリジナルである素子とは別の「新たなGhost」が生まれる。

これは、好奇心により膨大な多様性を取り込み並列化を繰り返すことでGhostを得た「タチコマ」や、ネットという多様な情報の海で情報収集(=並列化)を繰り返すことによりGhostを得た「人形使い」とまったく同じ。

異なるのは、その核となるものが「AI」か「人間の意思」か?だけである。

 

合田やクゼは並列化を「人々の意識を均一化する手段」として使ったが、素子は図らずも並列化を「多様性を得る手段」として使うことにより、「進化」を生み出した。

「均一化」より「多様性」が重要であることは本作「Solid State Society」の中でも示唆されている。

子は親に、ロボットは人に似ると言うが、お前は儂に似なかった。鳶が鷹を産んだようで嬉しいぞ。体だけは気をつけてな。

(「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」 殿田大佐のセリフより引用)

 

子供を拘束してしまったからだ。折角新しい人生を歩ませようと言うのに、洗脳エリートにしたのでは意味がない。教育は必要だが、野に放たなければ強い意志は芽吹かない。

(「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」 傀儡廻(コシキ)のセリフより引用)

 

こうして素子の無意識下という苗床で生まれたGhostが、傀儡廻の正体である。

(以降、このGhostのことを「素子の同位体」と呼ぶ)

 

この素子の同位体はクゼとの並列化によって完成するわけだが、この際、完成と同時にクゼ自身にも並列化され、内包される。

そして米帝の核ミサイル投下直前、クゼは素子の同位体を内包した自分のGhostをネットへ転送する。

これにより、素子の無意識下で生まれた同位体は完全に生みの親であるオリジナル素子とは分離し、別人格として「一人歩き」をしながらさらなる並列化を繰り返すことになる。

オリジナル素子とは異なる経験値を獲得し、さらなる多様性を取得した素子の同位体は、「個」としてのオリジナル素子ではとうてい解決できなかった問題を、思いもよらない方法で解決に向かわせるまでの「進化」した存在となる。

その問題とは、少子高齢化・失業率の増加と労働人口の減少・子どもの虐待死の増加とそれを止めることができない行政、いわば現在の社会システムそのもの。

この国はいい加減、誰かが何とかしなければいけない状態に来ている。600万を超える貴腐老人、失業率の増加と反比例する様に減少を続ける労働人口、そして少子化。挙げ始めたら切りが無い。知っているか?これだけ少子化が叫ばれる中、年間5万人もの6歳未満の子供が無意味に命を落としている事を。その内の三割は、ドメスティックな暴力による虐待死、しかも内の八割は

(中略)

児童相談所や警察等、関係機関が自体を把握していたにも関わらず、防ぐ事が出来なかった物だ。この国のシステムは既に崩壊し、個のポテンシャルは著しく低下してしまっている。

(「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」 傀儡廻(コシキ)のセリフより引用)

 

バトー・トグサ・アオイ(笑い男)・合田・荒巻・クゼ。

彼らの正義感を代弁したかのようなセリフである。

そしてこの問題を解決するため、素子の同位体は自分自身を拡張し、ひとつのシステムを構築する。

それが「ソリッド・ステート・システム」

 

ソリッド・ステート・システム

ソリッド・ステート・システムの基本概念は、虐待されている子どものGhostのリサイクル。

私は無意味に損なわれてしまうゴーストのリサイクルを思いついた。虐待監視ネットから危険な子供を見つけ出し、戸籍をロンダリングする。それで新しい人生を歩ませようと考えた訳だ。

(「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」 傀儡廻(コシキ)のセリフより引用)

 

素子の同位体がネットへ転送された2年前、リモート義体を使い総務省へ勤務していたコニシが死亡。

素子の同位体はコシキになりすまし、リモート義体を操り、宗井議員のプロジェクトへ参加。

 

そのプロジェクトを利用し、先に挙げたすべての問題を解決するシステムを構築する。

 

システムの中心は自分自身のGhost。

ハブ電脳で介護ネットに繋がった貴腐老人たちの電脳を束ね、自身のGhostの一部とする。

その上で虐待監視ネットから虐待を受けている子どもを見つけると、電脳ハックによる子どもの誘拐(電脳化&記憶と戸籍の書き換え)をし、貴腐老人の子どもとする。

子どもは貴腐老人の財産を受け継ぐ権利を得る。

(貴腐老人たちは、子どもの戸籍をロンダリングするためのシステムの一部&ソリッド・ステート・システム維持のための資金を提供)

 

介護ネットを通して貴腐老人の死亡を確認したあと、子どもを孤児の教育施設である「聖庶民救済センタービル」へ自動回収、自立できる教育を行ったのち、社会へ放つ。

自分自身は「傀儡廻」というハッカーとして、システムに害をなす要因を排除する。

 

このシステムがソリッド・ステート・システム。

素子の同位体を中心とした、システムに連なるすべてのGhostの「集団的深層無意識」により、以下の問題を解決のために行動を起こす。

少子高齢化・失業率の増加と労働人口の減少・子どもの虐待死の増加とそれを止めることができない行政

 

その原理は「STAND ALONE COMPLEX」そのものである。

 

最後は同位体である自分の経験値すべてをオリジナル素子にフィードバックすることで、その意思をさらに多くの人間の無意識に並列化、システムである自分自身からソサイエティを構築するGhostの発生を促す。

そのために必要なことが、オリジナル素子との有線であり、有線をするために自己消滅(銃による自殺)を図る。

これでソリッド・ステートは完成する。我々は消滅する媒介者となって、次のソサイエティに介入して行こう。

(「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」 傀儡廻(コシキ)のセリフより引用)

 

傀儡廻との有線によりすべてを知った素子(オリジナル)は、多様性による進化が、個であるオリジナルをはるかに超える可能性を持つことを改めて認識し、公安9課という多様性に戻ることを決意する。

 

まとめ

STAND ALONE COMPLEXシリーズ最大の魅力は、これまで解説をしてきた内容を「ギリギリ」分かるラインで描いているところにある。

これ以上分かりやすくすれば「メッセージ性」が強すぎてアニメならではのかっこよさが損なわれるし、これ以上分かりづらくすれば「難しすぎてつまらない」となってしまう。

「ギリギリ」だからこそ、観る度に新たな発見があり、つながりが見えてくる。

 

何度も観たくなる面白さ。

それこそが「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXシリーズ」の名作たるゆえんである。

 

 

補足:STAND ALONE COMPLEXシリーズ、全53話を無料で視聴する方法

動画配信サービスの「無料体験」を活用することで、シリーズ全話を無料視聴することができる。

基本的に申込の際、クレジットカードが必要となるが、体験期間中に退会すれば費用は一切かからない。

もちろん費用以外のペナルティもない。

(退会直後の無料体験再申込は不可)

 

また体験してみて気に入れば、そのまま月額を支払い正式会員としてさまざまな動画を視聴することも可能。

 

どのサービスに加入しても、1作品に換算すると、

  • 月10作品(10話)以上、アニメ・ドラマ・映画を観るのであれば、

    1作品:20~100円程度

  • 月20作品(20話)以上、アニメ・ドラマ・映画を観るのであれば、

    1作品:10~50円程度

 

どちらにしても、無料体験して損をすること何もない。

少しでも興味があれば、この機会に無料体験を試してみることをおすすめする。

 

U-NEXT(ユーネクスト):SAC・SSSの無料視聴が可能

まず、アニメ配信本数最大を誇る動画配信サービス「U-NEXT(ユーネクスト)」

このU-NEXTの「31日間無料トライアル」で、

  • 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(SAC) 全26話
  • 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society(SSS) 全1話

を無料で見ることができる。

「STAND ALONE COMPLEX 全26話」を完全無料で見ることができるのは「U-NEXT」と、後述する「Hulu」のみ。

他の動画配信サービスでは、無料体験期間でも「追加課金(1話につき200~300円程度)」が必要となる。

 

また、U-NEXTで「STAND ALONE COMPLEX Solid State Society 全1話」を視聴するには、324円の追加課金が必要になる。

ただし、「31日間無料トライアル」申込の際、無料で600ポイント(※)が付与されるため、このポイントを使用し、無料視聴が可能。

(※1ポイント = 1円)

なお「STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」を追加課金なしで視聴できる動画配信サービスはない。

 

無料トライアル後も、月額1,990円(税抜き)で、

  • 動画(アニメ・ドラマ・映画・成人向け)
  • 雑誌
  • コミック・書籍

を見ることができる。

 

毎月1,000ポイントが付与されるため、追加課金が必要なものも利用可能。

 

国内最大級のラインナップ、「31日間の無料トライアル」でぜひ実際に利用してみて欲しい。

↓「U-NEXT」の無料体験はこちらから

U-NEXT

 

 

dアニメストア:S.A.C 2nd GIGの無料視聴が可能

次に紹介するのはドコモが運営するアニメ専用動画配信サービス「dアニメストア」

ドコモが運営しているが、誰でも(ドコモの携帯を持っていなくても)利用可能。

このdアニメストアの「初回31日間無料」で、

  • 攻殻機動隊 S.A.C 2nd GIG 全26話

を無料で見ることができる。

「S.A.C 2nd GIG 全26話」を完全無料で見ることができるのは「dアニメストア」のみ。

他の動画配信サービスでは、無料体験期間でも「追加課金(1話につき200~300円程度)」が必要となる。

 

全作品見放題のため、無料期間・有料期間含めて、追加課金は一切なし。

 

 

無料トライアル後も、月額400円(税抜き)で、

  • 動画(アニメのみ)
  • コミック

を追加課金なしで、すべて見ることができる。

 

月額の安さが魅力、「アニメ好き」におすすめのサービスである。

↓「dアニメストア」の無料体験はこちらから

 

 

Hulu(フール):SACの無料視聴が可能

最後に紹介するのは、追加課金なし、配信作品すべて見放題の「Hulu(フール)」

このHuluの「2週間無料トライアル」で、

  • 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX(SAC) 全26話

を無料で見ることができる。

ただし、先に紹介した「U-NEXT」とは異なり、Huluの配信作品の中に「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society(SSS)」はない。

そのため、SSSを無料で見るためには、SSSを配信している別の動画配信サービスの無料体験を利用する必要がある。

 

dアニメストア同様、追加課金はなく、すべて見放題。

また、アニメ以外(ドラマ・映画)も視聴でき、特に海外ドラマ・洋画のランナップは豊富。

 

無料トライアル後も、月額933円(税抜き)で、

  • 動画(アニメ・ドラマ・映画)

を見ることができる。

手ごろな月額で、アニメのほかに、海外ドラマや洋画も見たい時におすすめのサービス。

↓「Hulu(フール)」の無料体験はこちらから

 

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