うつ病全般

うつ病の歴史-西洋編

「うつ病は現代の病気」のように思われがちですが、 他の病気同様、昔からありました。

 

ただ、「薬で治す脳の病気」という考えが定着したのは ごくごく最近のことです。

昔、うつ病はどのようなものと考えられ、どのような対処がなされていたのでしょうか?

 

今回は「うつ病の歴史」について見ていきたいと思います。

 

古代ギリシャ

紀元前4~5世紀。

 

ギリシャにヒポクラテスという人がいました。

「医学の父」と呼ばれるとても有名な人だそうです。

 

このヒポクラテス、 うつ病は「黒胆汁(こくたんじゅう)」という黒い体液が 増えることが原因で発症する、 (正確には「黒胆汁」を含めた4体液のバランスが崩れる) という説を提唱しました。

治療法は

 

「転地療法」(引越し)

「食餌療法」(食事)

「生活療法」(生活)

 

たまに「薬草」も使われていたそうです。

 

また、うつ病の原因といわれたこの「黒胆汁」 ギリシャ語で「メラノス(黒い)・コロス(胆汁)」と 呼ばれていました。

 

そしてこの「メラノス・コロス(melanos cholos)」を語源として、 のちに「メランコリー(melancholy:憂鬱(ゆううつ))」という言葉ができたそうです。

 

中世ヨーロッパ

中世ヨーロッパといえばキリスト教会。

狂気の権威です。

(現在のキリスト教会を否定する意味ではありません)

 

人類共通の「敵」と闘うことで、 自分たちの権威を高めようと考えました。

 

人類の敵といえば「悪魔」

 

ただ悪魔はその辺をぷらぷら歩いてるわけではないので、 攻撃しづらい。

そこで「悪魔に取り憑かれた」人間を仕立て上げ、 闘い、勝利し、そして権威を高める。

 

「魔女狩り」

 

というやつです。

 

格好の餌食となったのが、精神疾患者。

精神疾患者は「悪魔に取り憑かれた者」すなわち「魔女」とされ、 山のように処刑されていきました。

 

うつ病の暗黒時代です。

 

19世紀末~20世紀初頭:ヨーロッパ

この時代、精神医学界に2人の重要な人物が現われます。

 

1人はドイツの精神科医クレペリン。

簡単に言うと

 

「精神疾患は「病気」だよ」

 

ってことを 言ったんですね。

 

うつ病は甘えじゃなくて病気ですが、クレペリンがいなければ、私たちうつ病患者は 今も迫害を受け続けていたかもしれません。

 

またこの人『精神医学提要』という本を書いて、 その中で「精神疾患の分類」を行いました。

現在、精神疾患の基準書として広く使われている、 「DSM」のおおもとを作ったんですね。

(※DSM:アメリカ精神医学会が作成した、精神疾患全般の診断のための基準書)

 

つまりこのクレペリンがいたから、私たちは今の治療を受けることができているんです。

 

さて、この時代に現われたもう1人は オーストリア生まれのユダヤ人医師、フロイトです。

 

よく知らないけどなんか有名、そんな感じですよね。

 

先のクレペリンが「薬物療法」の基礎を作った人であるのに対し、 フロイトは「精神療法」の基礎を作った。

そんなイメージで大丈夫だと思います、たぶん。

 

催眠術を使ってヒステリー症状を治療するのが上手だったそうです。

途中で使うのやめっちゃったみたいですけど。

 

1950年代

この頃、ノルアドレナリン・セロトニン・ドパミンといった 神経伝達物質が相次いで発見されます。

 

そしてこれらの物質が減ると、うつ病になるのではないか? という仮説がたてられました。

 

「モノアミン仮説」

 

というやつですね。

 

その後1960年代に入ると、 この仮説に基づく抗うつ薬がガンガン発見され、 うつ病の研究も一気に進みました。

 

黒胆汁がうつ病の原因だ、といっていたヒポクラテスの時代から、 2000年以上の時を経て、ようやく「うつ病は薬で治す」時代が やってきたのです。

 

ただ、これらの薬を使う時に、ちょっとした問題が生じました。

 

それまでのうつ病の診断は「主に何が原因であったか?」

 

つまり

 

「心因性なのか、内因性なのか、外因性なのか?」

 

といった観点で診察が行われていました。

(※心因性:ストレスとか、内因性:遺伝とか、外因性:頭ぶつけたりとか)

 

ところがこの「原因」観点の診断では、 薬の処方がうまくできなかったんです。

うつ病の原因ってあいまい(というより多岐に渡り過ぎている)ですからね。

 

あいまいな診断に基づいて処方・投薬というのは あまりよくないだろう、と。

(もちろん原因の診断も回復には必要です)

 

そこで、「症状」だけに焦点をあてた はっきりした診断基準が登場します。

 

1980年に「DSM-3」という「症状」だけに焦点をあてた診断基準が、 アメリカ精神医学会から発表されます。

先に登場したドイツ人クレペリンが行った「精神疾患の分類」が ここで一気に開花した感じですね。

 

その後、DSMは、「DSM-4」「DSM-4-TR」と改訂を重ね、 2016年現在、「DSM-5」(第五版)が使用されるに至ります。

 

まとめ

このように、古代ギリシャ~現代までの うつ病の歴史を見てきましたが、 実はこれらは、うつ病を含む精神疾患の歴史のほんの一部に過ぎません。

 

精神疾患の歴史の大部分を占めるのは、 迫害と虐殺、そして人体実験まがいのおぞましい治療です。

ナチスドイツによるユダヤ人の迫害がかわいく思えるくらい、長く暗く残酷な歴史です。

(ナチスドイツも「安楽死プログラム」というもので精神疾患者を虐殺していました)

 

私たちが受けている治療とは、いわばそれらの犠牲のもと、確立された非常に貴重なものです。

 

「うつ病は辛く苦しい」

 

でも現代に生まれ、適切な治療を受けられるということは、 本当に奇跡のようなことなのです。

 

「生きるチャンスがある、回復するチャンスがある」

 

これだけで充分幸せです。

 

参考

 

書籍

『精神医学の歴史(レグルス文庫)』

 

『精神医学の歴史(文庫クセジュ)』

 

『これならわかる!精神医学(史上最強図解)』

 

『ウルトラ図解うつ病』

 

webサイト

 

AgnieszkaMonk / Pixabay

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